「イヅナちゃんって確か、東洋のハーフだっけ?お父さんはこの国の人なの?」

エイモンも察してくれたのか、イヅナにニコニコしながら話しかけてくる。誰かに声をかけられると、心の傷は早く塞がってしまうものだ。

「えっと、私の父は確かに東洋出身なんですけど、マオ国の人ではないです。マオ国よりさらに東の国の出身ですね」

「じゃあ、ツヤさんと一緒だね。血を調べたら、ツヤさんはマオ国より東のケレト出身だってことがわかったから」

ケレトはマオ国と同じ湿気のある風が吹いているのかしら、イヅナは父の故郷がどんなものなのか想像する。

父から故郷の話は聞いていたが、一度も行ったことはない。東洋にすら来るのが初めてだ。マオ国からケレトまでは、船で半日ほどでそれほど時間はかからない。この海の向こうに、父が生まれ育った故郷があるのだ。

「……いつか、行ってみたいわ」

例え任務であったとしても、ケレトに行けるとわかったら喜ぶだろう。そんなイヅナを見て、ヴィンセントはボソリと呟く。