「ツヤとレオナードは、大国にある老舗旅館、シャオゴウの従業員として潜入している。その老舗旅館に泊まった人が何人も行方不明になっているからなんだ。でも、なかなか捜査が進展しないみたいでね、君たちにお客として潜入してほしいんだ」

「じゃあ、僕とヴィンセントくんが仲のいい先輩と後輩での旅行、イヅナちゃんとチターゼちゃんが友達同士での旅行っていう設定かな?」

エイモンがそう言った刹那、「絶対に嫌です」と低い声が響く。その低い声のせいで、テーブルが一気に静かになった。全員の目が、怒りを目に宿らせたチターゼに向けられた。

「妖とまともに戦えない役に立たない女と一緒に行動するとか、吐き気がする。絶対に嫌だ。任務には行きます。でも、この女と一緒に行動はしたくない!!」

「チターゼ、言い過ぎだろ!」

「チターゼちゃん!」

アレンとエイモンが咎めたものの、チターゼはイヅナを睨み付け、財布からお金を取り出すと自分の分を置き、その場から立ち去る。

「ごめんね、チターゼちゃんが……」

「部下の教育、ちゃんとエイモンしてる?これって大問題だと思うんだけど」

エイモンが謝り、その隣でギルベルトが怒っている。イヅナは何も言えず、俯いた。その手をヴィンセントが包み、アレンが「ごめん」と何度も呟く。

先ほどのように笑えず、ただ合同潜入捜査への不安だけが、イヅナの中に残った。