私の家系、『悟リ(サトリ)家』では、十五歳の誕生日に、

人の心を読むことができる能力を授かる。





「……とうとう明日、か」





 そう、明日11月30日は私、『悟リこころ』の誕生日。

 だから、明日からは人の心を読めるようになる。

 ……少し楽しみだけど、同時に、少し怖い。



 今まで信用していた人が、私を嫌いだったのではないか、とか。

 大好きだった人にどう思われていたのか、とか。 



 気になることが、いざ目の前に来ると、急に怖くなってしまう。






「お嬢様……」


「何、執事?」


「心を読めるようになっても、私を嫌いにならないで下さいね」


「……何か隠し事でもしているの?」




「まぁ、なんていうんでしょう。……はい」





 誰にだって、隠しておきたいことくらいある。

 執事もきっとその一人であることは、確かよね……。





「貴方がどんな評価を私にしていても、構わないわ。
 ……主従関係なんだし。そのくらいの下心はしょうがないわよ」





「……はい」


「眠いから寝るわ。お休みなさい?」


「はい、お休みなさい、お嬢様……」





 電気が消え、意識が薄れ、夢の中に入る感覚を覚える。







 ……あの時言ったのは、

 昇進したいだの、そういう意味を込めて言った『下心』だったのに……。





「お嬢様、朝でございます」


「……えぇ。おはよう執事」




(……ああああああああああああ!

 俺のこころが!

 今日も

 か 
 わ
 い
 す
 ぎ
 !
 !
 !



 天使すぎる、いや、女神……。いやいや!

 女神なんて物じゃない!!!

 神をも超越した存在!!!

 今日もこころが

 最
 &
 高

 ッ!!!!!



 尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊いッ!)








「……取り敢えず執事、病院に行きましょうか?」



 ……まさかの、恋愛的な意味での『下心』の持ち主、でした。

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