「どう?僕たちと一緒に体育祭に出てみない?」
「私、高校生活初めての体育祭、実桜ちゃんと一緒に出て思い出作りたいな」
藤波くんと香純ちゃんは私の目の前に立って、真っ直ぐ私の方へと手を伸ばす。
どうかこの手を取って欲しいという気持ちが強く伝わってくる。
本当に突然私が体育祭に出て迷惑にならない?
その前に、本当にまたここに足を踏み入れる勇気がある?
ここには藤波くんと香純ちゃんがいるから大丈夫。
遊びの延長線上ではあったけれど、練習もしているんだから大丈夫。
不安と自信が入り交じり、私の心はグルグルと渦を巻いて葛藤していた。
「大丈夫だよ、実桜ちゃん。確かに実桜ちゃんにとって学校は嫌なことがあった所で怖いかもしれないけど、そんなに悪い所じゃないよ」
「もし何かあっても、僕たちが必ず守るから」
どうしよう。
優しすぎる2人の言葉に、涙が溢れてしまいそう。
涙を零さないようにと上を向くと、そこには私の不安とは裏腹に、なんの迷いもないくらい綺麗な青空が広がっていた。
───きっと大丈夫。
このどこまでも青い空がそう言っているような気がした。
「私、出てみる、体育祭」



