気づけば君が近くにいてくれた




「実桜ちゃーん、着替えられた?」


「もう少し!」



香純ちゃんを待たせるわけにはいかない。


いろいろと頭の中を駆け巡る思いは1度綺麗に消して、着ていたTシャツを脱ぎ、香純ちゃんから受け取ったTシャツに着替えて部屋を出た。



「じゃあ行こっか」



香純ちゃんに手を引かれて、昭子おばあちゃんに行ってきますを伝えてから家を出る。


マスクをしないで外へ出るのは何年ぶりだろうか。


玄関のドアの前で足がすくんでしまった私を、優しく香純ちゃんが連れ出してくれた。


手を繋いでいるからか、どこか安心している私がいる。


怖いけれど怖くない。


香純ちゃんの魔法で火傷跡はわからなくなっている。


ちらほら歩いている人とすれ違ったけれど、誰もこちらを見てはいない。


嫌な視線も嫌な言葉も、見えないし聞こえない。



「今日も公園?」


「まだ秘密だよー」



ここ最近通っていた公園への道とは違うと知っていながらも聞いてみたけれど、やっぱり何も教えてくれなかった。


しばらく歩いて、たどり着いたのは私のよく知る最寄り駅だ。