気づけば君が近くにいてくれた




「見たらきっとびっくりしちゃうよ?」



鏡を裏向きのまま抱きかかえて、自慢げにそう言う香純ちゃん。



「そんなに?」


「うんうん。かなり上手くいったと思うんだー!」



いくよ?とカウントダウンされているようで、緊張感が強くなる。


意を決して、ゴクリと唾を飲み込んだ。



「じゃじゃーん!」



くるりと向きを返されて、鏡とご対面。


そこに映るのは、間違いなく私の姿……なんだけれど。



「うそ……っ」



私の顔にあるはずのものがない。


あったはずの場所を手で触れる。


いくら年月が経っても消えることはなかった、コンプレックスの左頬にある火傷跡。


何度見てもそれがないのだ。



「どう?すごいでしょ?」


「香純ちゃん、一体何を……」


「何って実桜ちゃんも見た通りメイクだよ!メイクってすごいの!実桜ちゃんは元がいいからそんなに手を加えなくてもいいんだけど、メイクすることでちょっと世界が変わるでしょ?」



香純ちゃんが私の隣に並び、小さな鏡の中に2人が並ぶ。


鏡越しに私へ笑顔を向けられた。


「本当にすごすぎるよ、香純ちゃん」