気づけば君が近くにいてくれた




式の間は誰とも話さなくていいから楽。


ただただ用意された椅子に座って、話を聞いていればいい。


お決まりの校長先生からの長い話や、何故か美男美女が多い生徒会長からの話、吹奏楽部による校歌の演奏。


どれも楽しいものじゃないし、なんなら早く終わって欲しいと思う。


そして私は早く居心地の悪いここから出て、帰りたい。


最後もまた、吹奏楽部が演奏するマーチに合わせてクラスごとに退場した。


教室に戻るとすぐに担任の先生からの話があった。


明日は在校生と新入生が全員体育館に集まって行う、対面式があるんだとか。


そこで部活の紹介もされるらしい。


基本的に部活には全員入部して欲しいと言っていたけれど、実際にはアルバイトをしたいからと入らない人もいるし、私も部活に入る気は全くない。


私にとってはあまり関係のない話だ。


一番ドキドキしていた話題は、初めましてでよくある自己紹介の時間。


風邪で声が出ないと何とかやり過ごせないだろうか。


だんだんと不安になり、じんわりと手に汗が滲む。



「今日はあまり時間がないから、明日ちゃんと自己紹介の時間を取っているので───」



先生のその言葉を聞いて安心した。