気づけば君が近くにいてくれた




電車を2つ乗り継いだ先にある高校。


最寄り駅で降りると、同じ制服を着た人たちがぞろぞろと歩いていた。


まだみんな新しい制服を身につけている。


きっと私と同じ新入生。


私とは違って、キラキラして見える。


これから始まる新しい生活に心を躍らせている。


羨ましい。


頑張って来てみたのはいいけれど、そんな希望は何も見いだせない。


頑張ると決めた意思が揺らぎ始める。


このまま回れ右をして帰ってしまってもかまわない。


むしろその方がずっと楽だ。


今まで通り家に引きこもって、誰とも関わらずに過ごしている方が嫌なことも何も考えなくていい。


でもそうしてしまえば、何も変わらない。


背中を押してくれたあの人に申し訳ない。


入学式に出たらすぐに帰る。


それでいい。


それでもいいって言ってくれた。


マスクが頬の上までしっかり覆っていることを確認して、高校の校門をくぐった。