ピンポーンとインターホンが鳴り、玄関で出迎える。


あの日から、香純ちゃんと藤波くんが来てくれた時は、昭子おばあちゃんじゃなくて自分で出るようにしているんだ。


もちろん、私のことを受け入れてくれた2人の前ではもうマスクはしていない。


ありのままの自分でいることができている。



「はーい」


「実桜ちゃーん!こんにちは」


「片寄さん、体調はどう?」


「いや、先生か!」



こんな感じでいつも通りの夫婦漫才が繰り広げられた後、本題に入る。



「えっと……なんでジャージなの?」



気分転換?


勉強って別にいつも通り制服のままでもいいんじゃ。


疑問をそのままぶつけてみると、香純ちゃんが何かを私の前に突き出した。



「これに着替えてきて!あっ、今日は外だからマスク必要だったらつけてきてね!」


「えっ、あの……え?」



頭が追いつかない。



着替える?

マスク?



思考が停止したまま、ぼっと立っていると「行ってらっしゃい」とそのまま玄関のドアを閉められてしまった。