気づけば君が近くにいてくれた




初めて登校に電車を使う。


朝の時間は、いろいろな種類の制服を着た同じくらいの学生とスーツを着たサラリーマン、オシャレなOLさんが駅に集まっていた。


私を見ている人は誰もいない。


見ているのはスマホばかり。


そうは思うけれど、周りが気になってしまって居心地が悪い。


前髪は長いままだけれど、伸ばし続けていたロングの髪は長めのボブにカットした。


美容室に行くのは勇気が出なくて、昔美容師だった昭子おばあちゃんにお願いして切ってもらったんだ。


これで少しは印象が変わって、たとえ知り合いがいたとしてもすぐには気がつかないはず。


それでも不安はある。


緊張する。



“心配しなくても大丈夫”

“私になんか誰も興味ない”



何度も心の中で唱える。


どんなに言い聞かせても手は震えているし、心臓もバクバクと大きく嫌な音をたてていてうるさい。


それでも、ある人と約束したんだ。


今日は頑張ってみるんだって。


ギュッとスマホを握って、もう座る場所もないくらいの満員電車に乗り込んだ。