気づけば君が近くにいてくれた




「ミオちゃん?」


「ううん、大丈夫、ごめん」



香純ちゃんと藤波くんとは上手く話せるようになってきたけれど、やっぱり他人との会話は上手く話せない。


日本語を覚えたばかりの子どものように、単語しか出てこない。



……あれ、これって。



アオイさんの電話の向こう側から、電車の通る音がした。


聞き覚えのある駅名のアナウンスと発車メロディ。


確かこれって、家の最寄り駅の隣の駅のものだったような。


引きこもりだと言っても、何度か電車には乗ったことがあるから、何となく覚えている。


もしかしてアオイさんって、この近くに住んでいるんだろうか。


……って、それよりも電車に乗ろうとしている時に電話をかけて来てくれたの?



「今、もしかして駅……だよね?」


「あ、うん。ごめん、うるさかった?」


「ううん、忙しかったのかなって思って」



聞き覚えのあるアナウンスとメロディーだったからとは言わなかった。


アオイさんはいい人だということは知っているけれど、ネット上で知り合った、顔も本当の名前も何も知らない人。


自分の住んでいる所が近いとは知られたくなかった。



「全然!ちょうど降りたところだったし、ミオちゃんが心配だったから」



心配だからってそんな、メッセージを見てすぐに電話をくれるなんて。


私の周りには、同情だったり心無い言葉をかけてくる人ばかりだと思っていたのに。


こんなにも優しい人がいるなんて。


アオイさんも香純ちゃんも藤波くんも。


なんでこんな私に、優しく接してくれるんだろうって。


どこか安心して、止まっていたはずの涙がまた溢れ出した。