今の世界は、簡単に人に充実したプライベートを見せることができ、他人の生活を見ることができる時代だ。

アパレル会社に新卒で入社した早乙女萌(さおとめもえ)が目を覚ますと、ふわりといい香りが漂ってくる。

「おはよう、萌。朝ご飯ちょうどできたよ」

パジャマから新作ブランドの服に着替えを済ませた彼氏の遊星(ゆうせい)が微笑み、萌は「おはよう、遊星」とふわりと笑いながら背が高い彼を抱き締める。遊星は、少し切なげな表情を何故か見せていた。

「何作ってくれたの?」

遊星から体を離して萌が訊ねると、遊星は「フルーツサンドだよ」と言う。テーブルの上には、苺やキウイなどフルーツがたっぷり使われたフルーツサンドが並べられ、パプリカやレタスが使われているサラダ、キノコたっぷりのスープなどが机の上を華やかにしている。

「わあ、素敵!インスタに写真載せていい?遊星も一緒に」

「えっ……。顔、スタンプで隠してね?」

はしゃぐ萌はスマホを手に取り、慣れた手つきで写真を撮る。遊星とのツーショットも撮り、早速インスタにアップした。