更に。

「あ、奏さん…おはようございます」

と、私は登校してきた奏さんに言いました。

しかし。

「…おはよ」

と、奏さんは小さな声で答えました。

うっすらと笑顔を作ってはいますが、その笑顔は、どうにも力ないものに見えました。

いつもなら、挨拶の後、天気のことやら宿題のことやら、色々とお喋りするのですが。

今日は、奏さんは何も言わず、さっさと自分の席に向かいました。

まるで、話しかけられたくないと言わんばかりに。

…。

「…奏さん」

と、私は追いかけていって、奏さんに言いました。

「怒ってるんですか?」

「?何も」

「でも、何だか不機嫌に見えます」

「いつも通りだよ」

と、奏さんは言いました。

しかし、いつも通りではないのは明白です。

声のトーンがいつもより低いですし、何より視線が下がっています。

いつもなら、私の目を見て話すのに。

更に。

「それと、もう俺には近寄らない方が良いよ」

と、奏さんは言いました。

近寄らない方が良い?

「どういう意味ですか?奏さんは私の親友です」

「でも、生徒会長の彼女なんだから。他の男と一緒にいたら、周りに誤解されるよ」

と、奏さんは言いました。

私が奏さんと一緒にいたら、何の誤解を受けると言うのですか。

お友達じゃないですか。

「それに、折角…皆憧れの生徒会長に選ばれたんだから。俺みたいなのと一緒にいたら、瑠璃華さんまで変な目で見られる。もう、俺と一緒にいない方が良い」

と、奏さんは衝撃的な発言をしました。

全く以て理解不能です。

「何でそうなるのですか?私と奏さんは、お友達じゃないですか。生徒会長は関係ありません」

「瑠璃華さんがそう思わなくても、周りの人はそう思うんだよ」

「周りがどう思おうと、そんなものは勝手に思わせておけば良いことです。それとこれとは関係ないと…」

「瑠璃華さんには分からないよ」

と、奏さんは言いました。

初めてでした。

奏さんが、怒気を込めた言葉を私に投げかけてくるのは。