喜び…。

それってつまり。

最初、私は奏さんと週末に出かけられないと聞いて、残念だと…つまり、悲しいと思って。

その後、じゃあ一緒に近くで勉強しようと誘われて、気持ちが高揚して…つまり、喜びを感じている訳です。

なんという、私の中の、人間的な感情で
しょうか。

私が、こんな感情を抱くときが来るとは。

これは、『人間交流プログラム』の、大きな一歩なのでは?

「瑠璃華さん…?大丈夫?」

と、奏さんは私に声をかけました。

それまで、私は自分の思考に夢中で、全く周りが見えていませんでした。

「あ、はい…。何ですか?」

「大丈夫?」

「大丈夫…だとは思いますが、自分でもまさか、こんな感情を体験するときが来るなんて…」

「え、な、何の話?」

と、奏さんは聞きました。

はい?

「それでその、週末は、来てくれるの?一緒に勉強しようって件は…」

と、奏さんは戸惑い気味に聞きました。

あぁ。

週末の予定は大丈夫か、と聞きたかったのですね、奏さんは。

それなら、躊躇う必要はありません。

何せ私は、アンドロイド生において初めて。

誘いをもらって、嬉しいと思ったのですから。

「勿論行きます。ちゃんと、問題集も作っておきますね」

「そ、そこまではしなくて良いんだけど…」

「今回は、国内だけではなく、海外の試験データも参照しながら作ってみます」

「う、うん。俺の話聞いてる?瑠璃華さん…」

と、奏さんは言いました。

が、私の耳には届いていませんでした。

私は今、私の抱いた初めての感情を持て余して、夢中でしたから。