その日私は、いつもより早めに登校しました。

何となくですが、その方が良い気がしたのです。

そして私は、教室の入り口で仁王立ちし。

彼が来るのを、辛抱強く、じっと待っていました。

彼が学校にやって来るのは、大体午前8時前後です。

大抵いつも、その時間帯のバスに乗ってくるのだとか。

その為私は、時計の針が7時50分を指した時点で、待機していることにしたのです。

もし午前8時10分を過ぎても、彼がやって来ないようなら。

私が、迎えに行くとしましょう。

高速移動モードに移行すれば、彼の暮らす「家」まで、彼を迎えに行き。

学校に連れてくるまでに、5分もかかりません。

こんな大事な日に、遅刻しては大変ですからね。

私が教室の入り口に陣取っていると、登校してきた他のクラスメイト達が、何やらぎょっとして私を見ていましたが。

一体どうしたんでしょう。私の顔に、何かついているのでしょうか。

とはいえ些末な問題なので、気にしないことにしました。

そのまま、辛抱強く待つこと10分。

時計の針が丁度8時を指す頃。

「…うわっ、ど、どうしたの?」

「おはようございます。奏さん」

と、私は言いました。

何故か奏さんはびっくりした様子ですが、何かあったのでしょうか。

「な、何でそんなところで待ってるの…?」

「昨日まで、奏さんは運動会に出るのを迷っている様子だったので。もし無断欠席するようなら、ご自宅まで迎えに行って運搬しようかと…」

「そ、そうなんだ…。良かった、自分で来て…」

と、奏さんはホッとしたように呟きました。

私も良かったです。奏さんがちゃんと来てくれて。

「今日は良い天気ですね、奏さん。雨や槍や斧が降ってきたら、運動会が中止になるところでした。危なかったですね」

「うん…。後ろの二つは降らないと思うけどね…」

と、奏さんは言いましたが。

世界は広いので、たまには、雨の代わりに武器が降ってくる可能性もあるでしょう。

何でも、決めつけは良くありません。

ともかく、奏さんが自分で学校に来てくれて良かったです。

…しかし。

私と奏さんが、教室に入るなり。

何故か、クラスメイト達から、痛いほどの視線を感じました。