「………ねえ、颯太さん」
キッチンにいる彼へ呼び掛ける。
「ん?」
「あのさ…」
「うん」
彼は何かを作りながらも、視線は私にあてて「なに?」と言いたげな表情を浮かべてた。
「結婚の話なんだけど……」
ガシャーンッ!!
「えっ!?ちょ、どうしたの!?」
途端、キッチンからお皿の割れる音が聞こえて慌てて私も駆け寄った。
床に散らばる無数の欠片が真っ白の食器が1つ割れてしまったことを示している。
「ごめん。ちょっと手が滑った」
「あ、うん…怪我はない?」
「ないよ」
珍しいなぁ…颯太さんがこんなミスをするなんて。
完璧な人だからこそ、些細なミスでさえも驚いてしまう。
黙々と散らばった破片を拾い集める彼は、前と同じように『結婚』の質問に答える様子はない。
(聞こえてなかったのかな?)
ちょうど聞いた瞬間にお皿割れちゃったもんね。だから聞こえてないのかも。
きっとそうだと思って、颯太さんのそばに腰を下ろす。
「ねぇ、颯太さん」
「危ないから向こう行ってて」
「え、でも…」
「いいから。」
「………………」
そして、なんだろう。
『結婚』について話そうとすれば
颯太さんはいつも私を遠ざけようとする。
口調もなんだか冷たくて、
(この話……あんまりしたくない?)
そんな風にも感じる。
でも、なんで?
今はまだ結婚出来なくても、そのうちの話ぐらいしてくれてもいいのに…



