「そんなに怯えんなよ」



「べっつに怯えてないし」




怯えてはいない。




ただ、怖いと思った。




いつもとはまるで別の表情で、鋭い目に敬語じゃない口調。




この人…誰だ?




「ああ、そうか。
怯えてるんじゃなくて、戸惑ってんのか」




私の脳内をテレパシーのように読み取った彼は、楽しそうに口角を上げる。




「戸惑わなくても、俺はちゃんとした本人だよ。島崎颯太、君の同居人」



「そんなこと…言われなくても分かってるし」



「だろうね。」




ふっ、と鼻で笑う彼を私は不審者を見るような目で睨む。




…何が言いたいんだ、こいつ。




「ただ、今の俺は”仕事用の性格”って説明すれば理解できる?」



「…は?仕事用?」



「そ。仕事場ではこれが俺。」




…意味が分からない。




性格を変える意味。
それが一番の謎だ。