──────────颯太side





「キミとの思い出は、いらない。」




麗華さんに向かってそう言った後、


彼女は眉間にシワを寄せて





「っ、」





俺の首元に噛み付いた。





「私に本気になってくれないと、ここから出してあげないから。」





悲しげな顔をして。





麗華さんはそのままベッドから降りると





「私が帰ってくるまで、大人しく待っててね。」





ガチャン



なんて、嫌な音が聞こえたのは気のせいだろうか。






麗華さんがこの部屋からいなくなり、俺は倒された身体を再び起こした。





(大人しく…ね。)





そう言うなら、両手縛れよ。





空いている手で硬く結ばれた部分に触れる。


少し無理をすれば外せるかもしれない。




その考えは正しかったみたいで、


手首がロープに擦れて少し傷は負ったものの、なんとか解く事ができた。





(早く帰らないとな…)





連絡も出来ていない。


キスのことだって、ちゃんと説明しなければいけないのに。




ベッドから立ち上がり、麗華さんによって外されたボタンを付け直す。





ネクタイは……もういいか。





赤いネクタイが視界の端に入るも、無視して扉の方へ。





ネクタイを付けることも

接客用の赤ネクタイも

俺は好きじゃない。