【短】そろそろ好きって言えよ。



握られたままの手に少し力が入る。


今日の仁、なんか変だ。


いつもだったら他愛もない軽口として終わるはずなのに、私を見つめる表情は真剣そのもので、笑って誤魔化そうとした唇が固まってしまう。


表情を消した仁の顔が近づいてきた。

答えを求められているのだと分かっていても、喉に詰まった言葉がなかなか出てこない。


「えっと……もし仁に彼女ができて会う機会が減っても、それは仕方ないと思うよ。その、私もいい加減彼氏作らないとって思ってる」


一歩一歩追い詰められるような感覚から逃れるように、思いついた言葉なんとか絞りだして並べていく。


彼氏が欲しいのは本当だよ。


でも、正直に言うと仁がいてくれるから今はいいやとも思っていたんだ。


私よりも私のことを知っている仁と過ごす時間が、恋愛から私を遠ざけるほどに心地よかった。