「別に、そーいうの興味ない」
ほんとに興味の欠片もない様子で、私の軽口をばっさり切り捨てた仁はスマホを弄りはじめた。
私もそれ以上は何も言わず、机に置かれていたマグカップに口をつける。
パステルピンク色のかわいいカップの中には甘いココアが淹れられている。どっちも私のお気に入り。
私が仁の家に遊びに行く度に、何も言わずに用意してくれるこのココアを飲む度に、嬉しくて擽ったい気持ちになるんだよね。
それと同時に、彼女がいないなんて勿体ないなあとつくづく思う。
……仁が恋愛に興味なくて、彼女作る気がないことを知って、どこか安心している自分がいるのはどうしてなのか。
仁の口から部活以外の学校の話を聞くことは殆どない。
ごく稀にクラスの話をする事もあるけど、「気になってる子がいる」とか「彼女ができた」みたいな恋バナは一切ない。
それどころか、女子から向けられる好意を鬱陶しがるほどだ。
前に仁と一緒に遊びに出掛けたときに、一度だけ同級生の女の子に声を掛けられていた。
でも、見ている私が思わずフォローしたくなるほど素っ気ない塩対応だったよ。
その場を和ませようと、女の子をかわいいねと褒めたら、何故か不機嫌になった仁を宥めるのに半日かかったなぁ。
今となれば懐かしい思い出。
きっと普段も女子にああいう態度なんだろう。
こうして私といる時みたいに、
優しくしてあげたらいいのにね。
……本人には言わないけれど。


