「……っ、じん……」
「すっげえ蕩けた顔してる。まだキスだけなのに」
しばらく自由になったというのに、たっぷりと時間をかけて唇を貪りつくされた私は口をぼんやりと開けたまま息を整える事しかできなかった。
こんなに気持ちいいキスされたら、もうただの幼なじみとして見れない。
「ん…はぁ……っ、こういう冗談はやめて……!」
「俺は本気だけど。ふざけてこんな事する訳ないだろ」
「だ、だって!私たち、こんなことする関係じゃないでしょ?今までずっと家族みたいに過ごしてきたんだから。こういうのは本当に好きな子とするべき……」
「……それ、マジで言ってんの?」
大きな溜息と共に絡められていた指が解けていく。
そして、すらりとした長身に比例した大きな掌が私の腰をそっと抱き寄せた。
引き締まった胸板の感触が頬に触れると同時に、嗅ぎ慣れた匂いがする。
ああ、仁らしい爽やかで落ち着く香りだ。
抱き寄せられた拍子に私の腕が卓に触れて、置いてあったマグカップがかたりと音を立てた。
部屋も、香りも、物も。ここにあるもの全部がいつも通りなのに、仁だけが違う。
「俺はずっと、菜月とこういう事したいと思ってたけど」


