かよ子が不思議そうに
立ち上がると車は二人の
目の前で停車した。

天羽は嬉しそうにぴょんぴょんと跳び跳ねている。

そして、運転席側のドアが開くと
翼が中から出てきた。
かよ子と天羽の姿を目にして
満面の笑みを浮かべる。



「パパーー!!」



翼はまるで仔犬のように嬉しそうに
掛けよってくる天羽をフワリと抱き上げた。


そして、「俺の天使ー」と
天羽をギュッと抱き締めしめた。




「翼さん、お仕事はどうしたんですか?」


その様子をかよ子はジトーっとした目で
見つめている。


「あぁ、二人だけでアトリエに来てるから
危ないだろ?
仕事で近くに来たついでに
様子を見にきたんだ。」


全く悪怯れる様子もなく
当たり前のように言い放つ翼に
かよ子は呆れたようにはぁっと息を吐いた。


「また、立花さんを困らせちゃいますよ?」


「先週も休みなく働かされたんだから
これくらいいいんだよ。
それより、天羽のこの白いワンピースどうしたんだ?
本物の天使かと思ったよ」


「紅葉おばあちゃまが送ってくれたの!
今度、ママと天羽とじいじで
おばあちゃまのいるシンガポールに行くのよ!」

嬉しそうに話す天羽に
「そんなのパパ聞いてないぞ...」
翼は顔を真っ青にして、かよ子に目を向けた。


かよ子は言いにくそうに口を開く。

「昨日、お母様から電話があって
仕事が今は落ち着いてるから
お父様と天羽と3人で来週から
遊びに来ないかって...
もう3人分の航空券も
手配してくれてるみたいなの」




「じゃあ、俺は...?」


この世の終わりのような顔をしている翼に
「パパはお留守番!!」
天羽が笑顔で追い討ちをかける。