ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「い、や……」
 
頑張って捻り出した言葉はそれだけ。嫌な汗がじわりと吹き出し、そのうちの一滴が左頬を伝りました。
 
いや……ここは嫌! まるでここはかつて、私が人形だった頃に居た場所に似ていました。黒一色の世界で、誰の声も音も聞こえない虚無の世界。
 
人形だった頃の私なら、喜んでこの世界に一人居る事を望んだのかもしれません。でも今はそんなこと思えなかった。

またあの頃の自分に戻るなんて考えが、頭の中を過るだけでも体が恐怖で震えました。

「……助けて……アムール様!」
 
涙を流しながら大好きな人に助けを求めた。しかし助けを求めたところで、彼は今この場にいない。助けを求めも、誰も私の事なんて――

「レーツェル様。起きてください、レーツェル様」

「――っ!」
 
懐かしい声と共に名前が呼ばれた時、場面は一転した。真っ暗な世界に色が付き始めると、それは私がよく知っている部屋の光景へと丸替わり。
 
私はぽかんとしながら、目の前の光景をじっと見つめた。

「ここ……」
 
部屋の中は真っ白な色で統一されていました。
 
さっきまで暗闇の中に浮いていた体は、大好きなお日様の香りがするベッドの中にあり、ベッドの正面に位置する場所には、この部屋に入るための大きな扉が構えている。

「……」
 
わけが分からなかった私は、ゆっくりと辺りに目を配った。

「レーツェル様? いかがされましたか?」

「っ!」
 
すると少し離れた場所から、聞き覚えるある声が再び耳に聞こえました。この声……! 私は金色の瞳を大きく揺らしながら、左側へと視線を送る。
 
窓から差し込む朝日によって輝く金髪に、優しく細められる金色の瞳。彼女の手には私が聖女だった頃に毎朝飲んでいた、ハーブティーが入った白いポットがあった。

「………………プラチナ?」
 
私は小さく彼女の名前を呟く。どうして彼女がここに居るのですか? プラチナはだって……!
 
プラチナは私の様子に首を傾げると、ポットを机の上に置いてから側まで歩いて来た。