ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「……目が…………元に戻ってる……?」
 
俺の右目はクラウンに移植されら魔眼によって、禍々しく血色のような瞳だった。しかし今鏡に映っている右目は、左目と同じ緑色の瞳をしている。
 
恐る恐る鏡を凝視し、ゆっくりと右目を見開かせる。そして目玉を左右上下に動かしてみる。

違和感がないことを確かめてから、俺は右目に魔力を流し込もうとする。しかしいつもだったらすんなり右目に行くはずの魔力たちは、ただ雫の中をぐるぐると駆け回るだけで、雫の中から出ようとしなかった。
 
逆にそのせいで俺自身が軽い船酔いしたみたいな感覚に襲われた。

「き、気持ち悪っ……!」
 
雫の中を駆け回っている魔力を落ち着かせるため、深く深呼吸しながら徐々に魔力を落ちかせていく。
 
魔力が落ち着いた俺は、閉じていた目を開けてからもう一度鏡に映っている自分の右目を凝視した。

「まさかこれも、クリエイトの仕業なのか?」
 
でもこの状況は幻を見せられている感じじゃない。

幻と言うよりも、元に戻されたような感じだ。

オフィーリアから譲られた守護石がないことも、いつも引き出しに入れていたはずの眼帯がないことも、そして右目が戻っていることも、『時間が戻っている』と思えば全て納得がいく。

「いや……違う」
 
もう少し考えてみろ。俺の右目が魔眼へと変わったのは、八歳の時に受けたあの人体実験が原因だったはずだ。

もし時間が戻っているんだと過程するなら、俺の右目は赤くないとおかしい。しかし鏡に映っている右目は赤くない。むしろ元に戻っているし、魔力量も魔眼を与えられる前の物に戻っている気がする。

「……いったい――」
 
何が起こっているって言うんだ?! そう小さく呟いた俺は、鏡に映る自分の姿を睨みつけた。

★ ★ ★

懐かしい香りがした。それは幼い頃によく彼女と一緒に遊んだ、川の近くに咲いているあの花たちの香りだ。
 
耳には川の流れる心地いい音色が届き、優しいそよ風が俺の髪をそっと撫ででいった。

「……っ」
 
俺はゆっくりと目を開けて、じっと上を見上げた。そして数回瞬きをしてから、寝そべっていた体を慌てて起こした。

「ここは!」
 
目の前には懐かしい景色が広がっていた。

もう二度と見る事はないと思っていた、故郷の景色を見た俺は複雑な感情が芽生えた。
 
違う、これはクリエイトが見せている幻だ。だって俺は確かにあの時、滅ぼされた自分の故郷の姿をこの目で見たじゃないか。