ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「あの服動きやすかったんだよな〜」
 
アルの魔力が込められていたって事もあってか、滅多な事がなければ破れる事はないし、暑さや寒さにだって強い。
 
だから今着ている服の物足りなさに違和感を感じるし、重い気もする。

「やっぱり違和感をなくすためにも、定期的にこっちの服もちゃんと着るようにしないとな」

なんて事を言っている俺だが、オフィーリアと出会う前の俺は、人一倍身だしなみには気を使っていた。
 
女神たち全員のお眼鏡に掛かるように、流行している物は随時チェックしていたし、自分に似合う髪型も研究して、【完璧な紳士】になるために挨拶の仕方や礼儀作法、ポーズだって何度も鏡の前で練習した。

「ふっ……本当にこんな俺が、トトがなりたかった姿だって言うのかね?」
 
俺はトトの容姿を見たことがないから、自分みたいに鏡の前でポーズを取っている姿が想像出来ない。

てゆか、そもそもトトはそんな性格ではないだろう。むしろミリィのように、汚物を見るような目でみてくるかもしれないし、それか見なかった事にしそうだ。

「トト……か」
 
俺はそう小さく彼の名前を呟き、どうやって右目を隠して外に出るかを考え始める。

「う〜ん……マジックの魔法を使えば、変装は出来るっちゃ出来るが」
 
こんな事のために無駄に魔力を消費したくないと言う気持ちが、俺の心を半分占めていた。
 
マジックの魔法を使うんだったら、洗いたての眼帯を早く乾かした方が良いに決まっている。

炎の魔法を使えば一瞬で乾くからな。もちろん火力の調節は上手くやるさ。

「よし!」
 
そうと決まれば善は急げだ。俺はそう言って大きく頷き、念のため最後に鏡の前でポーズを取ろうとする。

直ぐ近くにあった縦長の鏡の前の側により、ポーズの練習をしようとした時、俺は鏡に映った自分の顔を見て丸くした。

「なっ…………!」
 
確かに鏡にはいつも通り自分の顔が映っていた。

しかし一箇所だけ、いつもと違うところがあった。俺は鏡に映る自分の右目元を、人差し指でそっと触れた。