ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

☆ ☆ ☆

「ほんっとに、俺って情けねぇな……」
 
変なノイズ音に襲われ、意識を失ってから数時間後、母さんが飲ませてくれた薬のおかげで、俺は気分良く意識を取り戻した。

窓の外を見ると空は茜色に染まっていて、時刻は夕方の十七時を指していた。

「最悪だ……本当にまじで最悪だ!!」
 
体を起き上がらせた俺は、拳に力を込めて枕を思い切り殴りつけた。

「これじゃあ病人だった頃のまんまじゃねぇか!」
 
たかがあんなノイズ如きで気を失うなんて、俺の体はどうなっているんだ! 

現実世界の俺よりも、この世界の俺は体は弱いままだ。

「だから右目がないと体が弱いんだ……!」
 
そう小さく呟いた俺は、拳に力を込めて歯を噛み締めた。

あんな右目、欲しくて手に入れた物じゃない。

誰でも良いから取り出せるものならそうしてもらいたかった。

でもその事を考える度に、俺はちゃんと右目に頼らずに生きていく事が出来るのか? なんて不安が何度もよぎった。
 
右目のおかげで魔力量が遥かに向上したし、体だって丈夫になって寝たきりの生活から開放された。

ただ魔力を使いすぎると体がだるくなったり、重くなったりする事は何度かあったけど、そんなのぐっすり寝て起きれば翌日にはもう治っていた。
 
そう、この右目を手に入れてからというもの、デメリットに感じた物なんて一切なかった。

逆にこの右目に俺にとってメリットでしかなかった。

たとえこの右目が憎きクラウンから移植された物だとはいえ、俺がこの右目に救われた事は事実だ。

感情を捧げることで、魔法の威力がパワーアップする事は知らなかったが、今考えればそれも俺にとっては好都合だ。

俺にとって要らない感情なんて山程ある。

感情を捧げる事で更に強い力を手に入れる事が出来るのなら、俺は迷いもせず使ってやる。

どんな手を使ってでも、俺は生きていくって決めたんだから。

「まぁ、起きていたんですね」

「っ!」
 
部屋の扉近くで女性の声が部屋の中に聞こえた。

そして俺はその声に聞き覚えがあった。

それはついさっき聞いた、俺が心底大嫌いな奴の声――

「……」
 
俺は目を丸くし左右に揺らしながら、ゆっくりと後ろを振り返った。

「……………………エア」