ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「許嫁って何だよ!? 俺にそんな人居ないぞ! 俺が好きななのは――」
 
そのとき嫌なノイズ音が頭の中を襲った。

「うっ!」
 
な、何だ……このノイズ音は!? 俺は頭を抱えて椅子に座り直した。

「ブラッド!」

「お兄様!」
 
母さんとセシルは心配して側に来る。

「な、何だ……これ!」
 
ノイズ音は更に酷くなっていく。

「――っ」
 
急にノイズ音がピタリと止まると、頭から手を放した俺はそのまま椅子から落ちて倒れ込んだ。

「ブラッド!」

「フィエリア、早く薬を!」
 
意識が遠のいて行く中、父さんに体を抱き上げられる。

そんな父さんは顔を青くして、急いで俺の部屋に向かって階段を駆け上がって行った。あぁこの光景に見覚えがある。

それは幼い頃、高熱で倒れた俺を父さんが急いで部屋まで運んでくれた時の事だ。
 
高熱のせいで嫌な夢を頻繁に見ていた俺は、その日も黒い何かに追いかけられる夢を見ていた。

その夢を見るたび、眠ることも怖くなっていて、必死に父さんと母さんに助けを求めた。でもやっぱり黒い何かは、俺を飲み込もうとしてずっと追いかけてきた。
 
でもいつかだったか、突然黒い何かは夢の中で出て来なくなった。

相変わらず体は高熱によって酷くうなされていたけど、夢の中で黒い何かを見ることは、日に日に減っていった。

「……っ」
 
夢から覚めた時、誰かが俺の側に居てくれて、優しく頭を撫でてくれていた事を覚えている。

俺と同じ金髪を持って、父さんと同じ緑色の瞳を持った人。

あれは父さんだったのだろうか?