街へ出てこの世界の情報を集めようと思った俺は、まず一階へ下りて朝食を取ろうと思った。

歩き慣れた一階と二階を繋ぐ木製の階段を下り、リビングへ足を運んだ時いい匂いが漂っている事に気がついた。

「なんだ、ミリィのやつ。今日はやけに早いんだな」
 
いつもなら俺が起きる時間に合わせてここに来るってのに、珍しい事もあるもんだ。

何か用事でもあるのか? そう考え込みながら、ドアノブを掴ん扉を前へと押した。

「おい、ミリィ。今日は一体どうしたんだ? こんなに朝はやく……から……」
 
俺は驚いて目を見張った。

リビングに差し込む朝日にせいで、直ぐに気がつく事が出来なかった。
 
いつもミリィは朝食を作ってくれているカウンターでは、ミリィよりも少し背の高い赤髪を持った女性が、慣れた手つきで朝食を作っていた。

カウンター近くにあるソファでは、俺と同じ金髪を持った男性が、朝届いたばかりの新聞に真剣な表情で目を通している。

「……っ」
 
慌てて自分の目をこすった。

そんなはずがないと思いながら腕を離すと、目の前の光景は何一つ変わっていなかった。

二人の姿を呆然と立ち尽くして見ていた時、ドタバタと慌ただしい足音が二階から聞こえ、誰かが階段を下りて来る。

「いけない! このままじゃ約束の時間に遅れちゃう!」
 
その声を聞いた時、心臓が大きく跳ね上がった。

足音の人物は階段を下りて部屋の角を曲がると。俺の姿を見つけた。

「あっ! お兄様、おはようございます」
 
そう言って彼女――セシルは微笑しながら挨拶をしてくれた。

「っ!」
 
セシルの姿を見た俺は思わず後退った。そして同時に同様も生まれた。

「お兄様?」
 
目の前に居るセシルは、俺が知っている姿をしている。

クラウンの娘の姿をした、星の涙を入れるために作られた姿をしていない妹は、俺と同じ緑色の瞳を瞬かせながら、小さく首を傾げた。

その拍子に後ろで丁寧に束ねられた金髪のハーフアップが揺れる。
 
セシルは優しく微笑すると、何故かその場でくるりと一周し、服の裾をつまんで丁寧にお辞儀をして見せた。

「どうですか? お兄様。今日の私可愛いでしょ?」

「………………は? え、可愛い?」
 
なぜそんな事を尋ねられたのか謎だった。

今の話の中で、『どう? 私可愛いでしょ?』なんて会話をしていたか? 

いや、俺は今さっきセシルから挨拶をされただけだ。

だからそんな事を聞かれる理由が分からない。

別に妹が可愛くないと言うわけではないが、話の先が全然見えてこない。