ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「……なぜ、そんなこと言うんですか? 私が姉さんの妹だという事には、変わりがないはずですが?」

「…………ずっと後悔していたからです。あなたと向き合えなかった事が、あなたを一人にしてしまったことを」
 
ずっと後悔していただって? 

そんな言葉を直ぐに信じられるほど、私は姉さんの事を信じていない。

そんなことよりも、なぜ今頃になってそんな事を言い出したのか、そっちの方がよっぽど気になる。
 
それに私が一人になったのはフローライト姉さんのせいではないし、それは自分自身が望んだ事であって、謝罪される必要なんてない。

それだと言うのに、どうして姉さんは辛そうに顔を歪めているんだ?

「サファイア……あなたともう一度出会えて、わたくしとマリンは満足です。どうか……お元気で」

「……っ」
 
その言葉の意味が分からなかった。

もう一度出会えて満足です? 姉さんが一体何を言いたいのか分からなかった私は、軽く息をついてから背を向けた。

でも最後に――

「……姉さんたちも、どうかお元気で」
 
そう小さく呟いてから玉座の間を出て行き、『ある男』を見つけだすために、私は再び『氷の森』に向かった。


★ ★ ★


「お姉様……よろしいのですか? このまま行かせてしまって」

「良いのです、マリン」
 
わたくしは優しく弟の頭を撫でてから、サファイアが出て行った先を見つめた。

そしてあの時に自分が言った言葉を思い出し、目を閉じて深々と頭を下げる。
 
あの時――お兄様を殺したサファイアが憎くて仕方がなかった。

突然ある日何もかも全て奪われ、そのせいでわたくしとマリンは生きていくのが必死だった。

やっとの思いで氷国を抜け出し、マリンと静かに暮らしていた時、エアとサファイア達の話を偶然耳にした。

そしてお兄様が裏でやっていた奴隷売買のことも。

真実を知ってしまったわたくしは、サファイアに言った自分の言葉に深く後悔した。

直接謝りたくてサファイアの行方を追っていた時、ある街でエアと再会し彼女の事を尋ねたら――

「サファイアは私たちを守るために……氷結の力を解放して……」
 
話を聞いて目の前が真っ暗になった。

サファイアは氷結の力を使って、仲間たちを守って死んでいった。

氷結の力がどれだけ恐ろしく、強い力を秘めていたのかを、誰よりも彼女は知っていた。

自分の命をかけてまでもサファイアにとってエアと仲間たちは、大切な存在だった事をこの時のわたくしは知りました。
 
サファイアのために、わたくしに出来る事はないだろうか? 

そうエアに尋ねた時。

「でしたら、あなた達王家の血を絶やさないで下さい。その血は必ずサファイアの力になるのですから」