頭がガンガンする、それに何だか体も熱い。この感覚……見に覚えがあるような……。
 
しかしいったい何が起こったって言うんだ? 確か俺たちの目の前にエアが姿を現して、そしてクリエイトが魔法を発動させて……それから――

「んっ……」
 
俺は自分の顔に手を当てて体を起き上がらせる。その拍子にベッドが軽く軋み、左から眩しい朝日が俺の顔を照らした。

「っ!」
 
眩しいと思った俺は、手のひらの中から目を細め、表情を歪ませながら辺りを見渡した。
 
歪んだ視界がはっきりとしてくると、見覚えのある景色が目の前に広がっていた。

「……ここ」
 
間違いない、ここは屋敷の自室だ――そう思った俺は部屋の中から、窓の外をじっと見つめた。

部屋から見える景色は、特に変わったところは見られなかった。いつも通り、部屋から見える木には、仲の良さげな鳥たちが体をくっつけあっているし、少し遠くには大都市ルークスが見える。
 
左側には小さく頃によく遊びに行った森が見えて、遠くの方には泉も見える。

「いったい……これは何だ!?」

まさかこれも、クリエイトが見せている幻なのか? そう思った俺は、首から下げている守護石を握りしめようとした。

「っ!」
 
しかしそこにあるはずの守護石はなく、ただ空気を掴まされただけだった。
 
守護石がなくなっている事に焦った俺は、直ぐにアルたちの姿を探した。ベッドの隣り、クローゼットの側、扉近くの壁などに視線を配る。
 
でもアルたちの姿は見えない。いや、見えないどころか気配すら感じない。それは間違いなく、今俺の近くに居ないと言う事になる。

「引き離されたのか……?」
 
それにしても、クリエイトは何の魔法を発動させたって言うんだ? こんな場面、俺に見せたところで何も思わないと言うのに。
 
でも気になるところはいくつかある。それは部屋の内装だ。

この部屋の内装は、オフィーリアと一緒に暮らし始める前の物だ。

だから部屋の中には一人用のベッドしかないし、机やクローゼットの配置が元に戻っている。

それに部屋が少し狭いな。いっそ幻を見せるなら、俺が内装を変えた後のやつにしてくれても良いだろうに。
 
なんて内心で愚痴りながら、俺はベッドから出て部屋の時計に目を送る。

「七時か……」
 
いつもだったらあと三時間は素敵な睡眠ライフが待っている。しかし今はそんな悠長に寝ている場合じゃない。
 
こんな世界からは一刻も早く脱出して、クリエイトを倒さないといけない。それにエアの事もどうにかしないと。