ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「さ、サファイア!」
 
姉さんの呼ぶ声が聞こえる。しかし今は姉さんの声に返事をしている余裕なんてない。今はこの一撃に全てをかける。
 
左手に魔力が集まった時、脳裏に兄上と遊んだ幼き日の記憶が過ぎった。

「サファイアは化け物なんかじゃないからな!」
 
あの頃の兄上は、私にとって優しい兄さんだった。

いつも私の事を気にかけてくれて、一緒に遊んでくれてた。

そんな兄さんが……………………大好きだった。

「今だけだ。いつの日か俺が王様になった時、サファイアの事を悪く言う奴は、全員俺が性根を叩き直してやる。そして必ずお前のその力を何とかしてみせる」
 
そう言って兄さんは私に誓ってくれた。

「サファイアはサファイアだ。化け物なんかじゃない。だってサファイアって名前を付けたのは――」
 
兄上の言葉を思い出しながら、私は一滴の涙を流して――

「さよなら、兄上――」
 
絶対零度の魔法を放ったのだ。


☆ ☆ ☆


兄上との決着を付けた私は、最後に止めを刺すために左胸に切っ先を当て付けた。

「…………っ」
 
体に致命傷を負っている兄上が、何かを伝えようとして口を動かしている事に気がついた。

そして――

「あ……りが……とな、サ……ファ……イア」
 
その言葉を聞いた時、兄上の体から黒い霧がスーッと離れていった。

あぁ、ようやく解放してあげる事が出来た。これで大好きだった兄さんがようやく戻ってきた。
 
私は兄さんに微笑した。

「おやすみ……兄さん」
 
氷剣を使って私は兄上の左胸を貫いた。


☆☆ ☆


兄さんを黒い粒子から解放する事が出来た私は、頬に付着していた血を拭った後、玉座の間から出て行こうとする。

「ま、待ってください、サファイア!」
 
戦いを見ている事しか出来ていなかった姉さんが、私の背中に声を掛けてくる。一度足を止めてから、軽く姉さん達の方へと振り向く。
 
姉さんが私を呼び止めた時の声音は、怯えていると言うよりも、慌てて言葉を口に出したようなものだった。だから少し気になった。

普段姉さんがそんな声音で私を呼ぶ事はなかったから。

「あなた……これから何処へ行くつもりですか?」

そう尋ねられた私は軽く目を見張った。

確か前はこんなこと聞いて来なかったはずだ。

確かあの時姉さんは――