ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「うるさいんだよ、ラリマー。俺とサファイアの事で、一々首を突っ込まいでくれよ」
 
兄上はラリマー姉さんに冷たい眼差しを向ける。

指を鳴らして姉さんのお腹を貫いていた黒氷に指示を出すと、姉さんの体は氷の中へと閉じ込められる。

そして兄上が右手に拳を作った瞬間、氷は姉さんの体ごと粉々に砕け散った。

「マリン! 見てはいけません!」
 
フローライト姉さんは、マリンの顔を覆うと腕の中に閉じ込める。兄上と私の両方に目を配ると、何も言わずじっと様子を伺い始めた。

「サファイア。何も言わないのか? 大事な姉が殺されたんだぞ?」
 
兄上の態度に私は鼻で笑った。

たった今しがた自分の妹を殺した張本人がそれを尋ねるのか?

「その言葉そのままそっくり返すよ。私は別にラリマー姉さんが死のうが生きようが、心底どうでも良いからな」
 
フローライト姉さんとマリンに比べれば、私はラリマー姉さんが一番嫌いだった。

顔を合わせる度に私を罵倒し、『化け物』『人殺し』『早く死んでしまえ』などの、数々の言葉を投げつけられた。それも幼い頃からずっとだ。
 
だからラリマー姉さんが死のうが私には関係ない。

それどころかうるさい奴が一人消えてくれたから、悲しいと言うよりも嬉しい気持ちの方が大きい。

そう思ってしまうほど、私は薄情な人間なんだ。

特に家族に対する事についてはな。

いや……家族ではない、か。
 
私の返答に兄上は軽く笑みを浮かべると、玉座から立ち上がって階段を下りて来る。

目の前に手をかざし黒氷剣を作り出すと、剣に禍々しい力を宿らせた。私もまた青紫色の氷剣を作り出し、切っ先を兄上へと向ける。

「兄上……覚悟しろ!」
 
私は思い切り足場を蹴って兄上へと向かって行く。

兄上もまた剣を構えた時、互いの剣身がぶつかって火花を散らせた。

左手の中にも短い氷剣を作り出し、柄を握りしめて切っ先を兄上の顔面目掛けて突き出す。

しかし兄上はそれを簡単に避けると、今度は左手を向けてきた。

「――っ!」
 
顔の直ぐ目の前でその手から氷粒が放たれようとした時、そっと冷たい風が兄上の頬を撫でた。次の瞬間、兄上の下半身は氷結の力によって凍結させられて。

「なに!?」
その隙きに私は兄上から距離を取って、再び左手に力を集結させた。

力を解放した事により、玉座の間もまた徐々に氷の中に閉じ込められていく。

私は氷剣の切っ先をフローライト姉さん達に向けて、氷の守り(グラースシールド)の中に閉じ込めた。