ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

私は目を瞑って、内に眠る氷結の力を少しずつ解放し始める。

すると周りを冷気が漂い辺りを凍らせていく。

その光景に街の人達は悲鳴をあげると、一目散に逃げ始めた。

「こ、氷の悪魔よ! 早く逃げないと殺される!」

「ば、化け物!」

「この……人殺し!」
 
氷の悪魔。

化け物。

人殺し――そんな言葉、小さい頃から嫌と言うほど浴びせられた。

だから今更何とも思わない。何と言われようとも、私は『サファイア』だ。

氷の悪魔? 化け物? 人殺し? 

ふっ、だったらなってやるよ。悪魔に、化け物に、人殺しに、何にでもな。
 
私は王城の頭上い浮かんでいる、黒紫色の結晶体に両手をかざす。

「氷の精霊よ、大気の精霊よ、水の精霊よ、汝達の力を我に貸し与え、あの結晶体を破壊しろ!」
 
詠唱と共に私の周りに大きな氷の礫が生成される。

絶対零度(ゼロアブソルート)!」
 
魔法を発動したと同時に、氷の礫はいくつもの細氷に分裂すると、勢い良く結晶目掛けて飛んで行く。

それは見事に結晶体に直撃し、徐々に結晶体を氷の中に閉じ込めていく。

結晶体が完全に氷の中に閉じ込められると、今度は氷全体にひび割れが生じる。
 
私は最後に氷の槍を作り出し、狙いを定めてから投げ飛ばした。

氷の槍は結晶体を貫くと、そのまま氷と結晶体共々粉々に砕け散った。

「……」
 
その光景を見届けた私は、そっと胸を撫で下ろした。

王城の頭上に浮かんでいたあの結晶体。

あれは兄上が闇国から持ち込んだ黒紫石だ。

それは人々から負の感情を吸収し、闇国へと負の感情を横流ししていた。

その力は後に私達が戦った、黒焔の太陽(シュバルツソル)を完成させるために必要となる物なんだ。

だから私は真っ先にあの結晶体を破壊した。そして次に私がやることは――
 
私は氷の中に閉じ込めた王城を見上げながら王門をくぐり、玉座の間がある部屋へと向かって歩いて行く。

そして分厚い扉の前に立ち、王家の紋章でもあるスカビオサの花が彫られた扉を容赦なく破壊した。

「――っ!」
 
中には予想通りのメンバーが揃っていた。

「さ、サファイア……!」

「や、やっぱり……これはあなたの仕業ね!」

「……姉様」

そこには兄上を含めた、私の姉上である第一王女フローライト、第二王女ラリマー、そしてたった一人の弟である第二王子マリンが、怯えきった表情を浮かべていた。

まあ、当然の反応だ。

それにあの時と同じ顔をしているんだから、今更悲しむ必要なんてない。