「本っ当にお前は神に弱いよな。何であの女に執着すんのか理解出来ねぇや」
「別に理解してくれなくたって構わない。あの女の価値は、私だけが知っていればそれで良いのだからな」
「ふ〜ん。なるほどな。なら、もし連れて帰る時に抵抗されたら、無理矢理にでも連れて帰るか? それとも……」
彼は暗闇の中でニヤリと笑う。そんな彼の笑顔に釣られ、私も嫌らしく微笑した。
「……そうだなぁ」
私は頭の中でレーツェルを痛めつけている時の光景を想像する。自分の心中に湧いた感情に寄りかかりながら命令を下す。
「死なない程度に分からせてやれ」
「ははっ……。相変わらずお前は俺より悪人だな!」
「いいから、さっさと行け」
「はいはい、分かったよ。じゃあ、たんまりと報酬用意しておいてくれよな!」
彼は着ていたローブを翻し、闇の中へと溶けて行った。
私は男の気配が完全になくなった事を確かめてから、窓の外をじっと見つめた。
「お前の帰る場所はここだぞ。そうとっくの昔に教え込んだはずだ。だがもし、まだ分からないと言うのなら」
もう一度教え込む必要がありそうだな。あの体に――
★ ★ ★
部屋へと続く長い廊下を歩きながら考えていました。
このまま聖婚礼の儀式が上手く執り行われれば、アムール様とヘレナ様は正式に夫婦となります。
それはずっとアムール様が望んでいた幸せであり、きっと他の何よりも幸せな事だと思うんです。
この世界でなら、アムール様はあの罪を背負う事はありません。
氷国の事は私が何とかしてみせます。だからどうか幸せになってください、アムール様、ヘレナ様。
「……っ」
そう強く覚悟を決めた時、頬を一滴の涙が伝りました。
「あれ……?」
頬に伝った涙はどんどん溢れてきて、ボロボロと零れ落ちていく。
「どうして……泣いているのでしょうか?」
涙が溢れてしまう理由。それはとっくに分かっていました。
でも……これで良いんです。
アムール様が幸せなら、私はそれだけで良いんです。
「……アムール様」
ぽつりと彼の名前を呟いた私は、両手で顔を覆って泣いた。
声を押し殺して、自分の本当の気持ちも押し殺して。
「別に理解してくれなくたって構わない。あの女の価値は、私だけが知っていればそれで良いのだからな」
「ふ〜ん。なるほどな。なら、もし連れて帰る時に抵抗されたら、無理矢理にでも連れて帰るか? それとも……」
彼は暗闇の中でニヤリと笑う。そんな彼の笑顔に釣られ、私も嫌らしく微笑した。
「……そうだなぁ」
私は頭の中でレーツェルを痛めつけている時の光景を想像する。自分の心中に湧いた感情に寄りかかりながら命令を下す。
「死なない程度に分からせてやれ」
「ははっ……。相変わらずお前は俺より悪人だな!」
「いいから、さっさと行け」
「はいはい、分かったよ。じゃあ、たんまりと報酬用意しておいてくれよな!」
彼は着ていたローブを翻し、闇の中へと溶けて行った。
私は男の気配が完全になくなった事を確かめてから、窓の外をじっと見つめた。
「お前の帰る場所はここだぞ。そうとっくの昔に教え込んだはずだ。だがもし、まだ分からないと言うのなら」
もう一度教え込む必要がありそうだな。あの体に――
★ ★ ★
部屋へと続く長い廊下を歩きながら考えていました。
このまま聖婚礼の儀式が上手く執り行われれば、アムール様とヘレナ様は正式に夫婦となります。
それはずっとアムール様が望んでいた幸せであり、きっと他の何よりも幸せな事だと思うんです。
この世界でなら、アムール様はあの罪を背負う事はありません。
氷国の事は私が何とかしてみせます。だからどうか幸せになってください、アムール様、ヘレナ様。
「……っ」
そう強く覚悟を決めた時、頬を一滴の涙が伝りました。
「あれ……?」
頬に伝った涙はどんどん溢れてきて、ボロボロと零れ落ちていく。
「どうして……泣いているのでしょうか?」
涙が溢れてしまう理由。それはとっくに分かっていました。
でも……これで良いんです。
アムール様が幸せなら、私はそれだけで良いんです。
「……アムール様」
ぽつりと彼の名前を呟いた私は、両手で顔を覆って泣いた。
声を押し殺して、自分の本当の気持ちも押し殺して。



