ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「ほ、本当ですか!」
 
彼の言葉を聞いた私は、安心してそっと胸を撫で下ろした。これでアムール様たちは聖婚礼の儀式を受ける事が出来ます。

本当に……良かった。

「それではさっそく、この方々に文を出さなければいけませんが……、あいにく今の私はとても忙しく、文を書いている時間が取れません。なので聖女様、この件は全てあなた様にお任せ致します」

「え、宜しいのですか?」
 
彼から思ってもいなかった言葉を言われた私は、ぽかんとして目を瞬かせた。

私の知っている彼ならたとえ自分の仕事が忙しくても、利益になりそうな事が前の前にあったら、迷わずそちらに手を伸ばす人です。

それだと言うのに一体?

「聖女様が書かれた文は、責任を持ってプラチナに届けさせます。それまで聖女様は聖婚礼の儀式が執り行われる日まで、『大人しく部屋で待機していて』ください」

「っ!」
 
その言葉に目を見張りました。

そして直ぐに目を細めてレオナルドを睨みつけた。

彼はこの件を全て私に任せると言っていますが、どうやらそんな気はなさそうですね。

『大人しく部屋で待機していてください』と言う言葉の意味はおそらく――もう動くなと言う意味。

神がお告げになったのは、『この二人に対して聖婚礼の儀式を執り行う』と言う事だけ。

だからそれ以外の事については、神は一切関わってきません。

レオナルドはそれを知っているからこそ私の言った事を受け入れ、影で二人に危害を加えようとしているのかもしれません。

そんなこと――

「いいえ、レオナルド。手紙はプラチナには届けさせません」

「は?」
 
私は胸の前で手を組み、祈る素振りを見せてから口を開いた。

「これは神のお導きです。ですから私は、部屋で大人しく待機しているつもりなんて一切ありません。もしそんな事を神がお知りになられたら、神の怒りを買う事になってしまうでしょう」

「うっ!」
 
彼は本当に『神』と言う言葉に弱い人だ。

それは彼が一番神様の存在を信じているからです。

神の言うこと、神が決めたこと、それら全てが彼にとっては重要であり、神が関係している物は他の何よりも優先すべきこと。

神と利益を天秤に掛けたとしても、彼は必ず神を取るでしょう。
 
だから私はこれを上手く利用しようと思いました。

私の言葉――神の言葉を使いここから外へ出て、この世界から抜け出す手段を見つけなければなりません。