ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「それにしても、あのクリエイトの執着心は凄いですね。まさかエア様のためだけに、ここまで大掛かりな作戦を考えたんですから」
 
これも自分の事を救ってくれた事に対する恩返しなのか、それともただの願いなのか、果たして彼と彼女の本心はどこにあるのでしょうかね?
 
確かにブラッド君は、エア様の願いによって生まれた正真正銘【この世界のトト】だ。
 
トト様が本当になりたかった、【愛した人を心から思う】存在だ。
 
心から愛した人を一途に思い、その人のために命すらはる。まさにその姿は、あの世界で眠っている彼とは真逆の姿だ。
 
もちろんあの世界で眠っているトト様は、心からエア様の事を愛していた。

しかしエア様には、生まれた瞬間から【世界を浄化する】ために星の力を宿された。逆にトト様は、そんなエア様を守るための力を与えられた。
 
同じ道を歩む者同士ではなく、彼女は光ある道を、そしてトト様は光が見えない道を、それぞれ歩む事が運命だった。
 
だからトト様は己の気持ちや想いを押し殺し、彼女が自分の使命を全う出来るように、そして自分以外にも力となれる者たちを集め、最後はエア様たちだけをこの世界へと送り出した。

「悲しいですね、本当の気持ちを言えないというのは」
 
エア様はそんなトト様の気持ちを、この世界にやって来て初めて悟った。
 
自分のために、自分のせいでトト様の人生を台無しにしてしまい、申し訳ない気持ちで一杯になったエア様は、星の涙に助けを求める様に縋ってしまった。

「この世界の……トトを……本当の彼を探して」
 
と――
 
ブラッド君は確かに、トト様がなりたかった姿そのものだ。
 
しかしその分、彼は憎悪に囚われやすい体質だ。
 
トト様本人も憎悪に何度も飲まれそうになった事がある。でも彼には仲間が居ました。自分の本音や弱音を吐き出せる仲間が居たトト様は、闇に囚われる事なく、決して光が見えない道を歩んでいたとしても、その先には必ず小さな星の光が見えていた。
 
だがブラッド君には、自分の弱音を吐き出せる仲間が居ないし、自分にとっての光は彼女――オフィーリア様だけ。
 
彼は自分の弱さや弱音を吐き出す人間じゃない。
 
彼はそれ等を全て抱えたまま、己の力へと変える事が出来る人間だ。
 
そう考えると、エア様が望んだ【本当の彼】と言うのは、いったいどちらが正しいのだろうね?
 
どちらが本当に強く、そしてトト様が望んだ【自分】だったのか。
 
そんなこと本人に尋ねない限り分からないことだ。

「では、ウル。私たちも行きますよ」

「はい、兄上」

私は開けていた目を閉じて、遠くに見えるクリエイトへと視線を向ける。

「さて、彼はどちらの世界を望むのでしょうかね?」
 
そう小さく呟いた私は、ウルと一緒にその場から離れた。