ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

聖婚礼の儀式にはそれなりのお金が振り込まれます。

なのでレオナルドはそのお金さえ手に入れば、後は誰が来ても良いんです。

そして今回私に決定権を委ねたのは、ずっとくだらない事で揉めている上の方々を宥めるためでしょう。
 
聖女の言葉は神の言霊であり、決して破り逆らうべからず。と言う謳い文句がこの聖国では轟いています。

その謳い文句を広げた張本人は、もちろん言わなくても分かると思いますが、レオナルドはこれを使って一刻も早くこの案件を片付けたいみたいですね。

「とは言いましても……」
 
私はプラチナによって並べられた、参加者リストを見て軽く溜め息つく。この数十人の中から、たった一組を選ぶだなんて出来ませんでした。

そんなもの、適当に『これだ!』と言って決めてしまえば良いのに、何て思うかもしれませんが、私がそんなこと出来る人に見えますか?

「どうしたものでしょう……」
 
参加者リストには、新しく夫婦になる男女の写真とフルネーム、神に捧げる祈りの言葉が書かれています。
 
祈りの言葉は私が二人に変わって、神に祈りを捧げる内容になります。

夫婦になられる方々によって内容はそれぞれですが、祈りを神に捧げる事により、それは神の言霊として返ってきたす。

私はそれを二人に『神の加護』として伝えるのが役目なのです。
 
一枚ずつリストに目を通しながら、とりあえず目ぼしい人たちのリストをプラチナに渡していく。順番に見ていっていた時、私はある男女の写真が目に飛び込んで来ました。

「っ!」
 
写真の中に写っている男性の姿に見覚えがありました。

「…………………………アムール様?」 
 
私は小さくぽつりと彼の名前を呼んだ。

写真の中にはアムール様と幸せそうに笑っている女性が一人。

彼と同じ紅色の髪を持ち、優しく細められる薄ピンク色の瞳。間違いありません。この人がきっとヘレナ様。
 
これがここにあると言うことは、アムール様も私と同じ時間軸に飛ばされたのでしょうか?それとも……私と出会う前のアムール様?
 
写真に写っているアムール様は、ヘレナ様の隣で幸せそうに微笑していました。そんなアムール様を見て、胸が痛くなるのを必死に抑えた。

「…………っ」
 
前にアムール様が私に話してくれた事がありました。

ヘレナ様が奴隷として連れて行かれた日は、ちょうど聖婚礼の儀式が執り行われる五日前のことでした。

ヘレナ様はアムール様と一緒に、聖婚礼の儀式を受けられる事を、とても楽しみにしていたそうです。

でもお二人が聖婚礼の儀式を受けることは叶いませんでした。

そしてヘレナ様は――