ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「そういえばレーツェル様。実はご相談があるのですが」

「そうだん?」
 
プラチナの言葉に首を傾げた時、彼女は机の上にある大量の書類の中から、ある一枚の紙を見つけ出して、それを私の眼前にそっと置きました。

「三週間後に控えています、『聖婚礼の儀式』の事でちょっと……」
 
聖婚礼の儀式――それは聖女が新しく夫婦になる男女に送る、『神の加護』の事を言います。
 
聖国や他の国々では、聖女様に聖婚礼の儀式で神の加護を受け取る事で、その夫婦は永遠に幸せになれると言われていたそうです。

おそらくレオナルドが利益目的で、そう言った噂を流したのかもしれませんが、私は聖婚礼の儀式を執り行う事については嫌っていませんでした。むしろ羨ましい思っていました。
 
聖女から直々に神の加護を受け取る事が出来る聖婚礼の儀式を受けるには、まず聖教会へ申請を出さなければなりません。

聖教会で審議が行われ無事審査を通った者達に、後日儀式を執り行う日が伝達されます。表向き審議だなんて事は言えませんので、神の選定――神がお選びになったとして、民や他国ではそう言い伝えられています。
 
そして私はその日に向けて、三日三晩の準備に取り掛かります。

儀式の流れを最初から最後まで通して行い、一切のミスは許されません。

通しの中で一度でも失敗すれば、私はレオナルドによって鞭で体を叩かれました。

なので失敗しないように、細心の注意を持ってこの儀式に臨んでいるのです。

「実はこの日に来る予定でした夫婦が、急に来れなくなってしまいまして」

「え……」
 
急に来れなくなった? 何かあったのでしょうか?

「なんでも……戦争で夫となる方が亡くなられたそうです」

「っ!」
 
その言葉を聞いて目を見張らせた。そんな……戦争のせいで……。

「しかし急な事なので、こちらを準備を進めていた事もあり、急遽他の方々を呼び事になったそうです。しかしその事について上の方で、どの方々を呼ぶかで相当揉めているそうなのです。ですから先程レオナルド様からその夫婦を、レーツェル様に決めて欲しいと言われました」

「え、私が?」
 
そんな大事な事を私一人で決めてしまって良いのでしょうか? 

プラチナから話を聞いた時、一瞬だけそう思いました。

しかし直ぐに、これはレオナルドの目的なのだと悟りました。
 
レオナルドにとって、自分の利益にならない物にはとことん興味がありません。

今回もめている事も、レオナルドにとってはどうでも良いこと。