ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

ここはヘレナが居る。死んだ親父も、ヘレナの両親だって生きているんだ。俺が心から望んだ幸せが……ここにある。だから――

「……っ」
 
俺は頭を左右に大きく振った。

「何馬鹿な事を考えてんだよ……俺は!」
 
こんな世界に甘えるなんて、そんなこと許さない。そんなのただ現実逃避しているだけだ。自分が背負った罪から楽になりたいだけじゃないか。

「くそ……」
 
これはクリエイトの狙いなのかもしれない。自分が望んだ幸せを見せる事で、俺の意識をこの世界に留まらせようとするための。

「アル、そろそろ寝よっか」

「あ、あぁ……」
 
彼女は部屋の電気を消すと、俺と一緒にベッドに横になった。

「ふふっ」
 
するとじっと俺の顔を見ていたヘレナが吹き出した。

「おい……人の顔見て吹き出すのかよ?」

「ふふっ、だって」
 
ヘレナはそっと頬に触れてくる。

「だって、アルが目の前に居てくれるんだもの。それが凄く嬉しいの」

「なんだそれ?」

「ううん、何でもないから気にしないで」
 
そう言ってヘレナは頬から手を離し、自分の体をくっつけてきた。

「……ヘレナ」
 
そんなヘレナの体を抱きしめながら目をつむった。
 
もしこのまま眠りについてもう一度目が覚めた時、ヘレナはここに居てくれるだろうか? それとも――

★ ★ ★

この世界で目が覚めてから数日――
 
私は聖女としての仕事をこなしながら、この世界から出る方法を探っていました。

しかし側には常に護衛として、聖騎士の数人が付けられていました。

だからそのせいで自由に動く事が出来ず、今も机の上に置かれた大量の書類にサインしながら、私は深々と溜め息をこぼした。
 
そんな私が居る少し離れた場所では、プラチナが紅茶の準備をしてくれている。彼女の背中を見つめながら、服の袖をまくって体の傷に目を落とした。

そして表情を歪ませる。
 
この世界で目が覚めてから、傷を見る度に嫌な記憶ばかりが呼び起こされました。痛い、怖い、苦しい、悲しい――死にたいと。