ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「私なら大丈夫よ。だってアルが居てくれるもの」

「え、俺が?」

「そうよ」
 
ヘレナはそう言って満面の笑みを浮かべると、俺の腕に自分の腕を回してきた。

「だって私にこと守ってくれるんでしょ?」

「っ!」
 
その言葉を聞いて顔が一気に熱くなった。彼女の言うそれは、あの時に言ったプロポーズの事を言っているのだろう。

「ヘレナ。一生をかけてお前を守り、必ず幸せにする。だから……俺と結婚してくれ」
 
そう彼女にプロポーズをしたのが、今から何日も前になる。俺にとっては人生で一番大切な日だったし、緊張して居ても立ってもいられなかったから、今でも記憶に色濃く残っている。

「あ、あの時の事を蒸し返すのはやめろ! ……恥ずかしいだろ!」

「アルってば照れてるの? もう可愛いんだから」

「か、かわっ!」
 
可愛いだって!? そんなの有り得ないだろ! 

俺なんかよりもお前の方が――なんて内心で言いつつ、言葉にすることをやめた。言葉にしたところで、きっと弄られて終わるのがオチだからな。

「ほら、アル。一緒に帰りましょう」

「あ、あぁ……」
 
彼女に手を引かれながら後ろを着いて歩く。あぁ、これもまた何時もの事だな。そう思って軽く笑った時、彼女の後ろ姿が一瞬だけ、レーツェルの姿に変わったように見えた。

「っ!」
 
確か前にも……似たような事があった気がする。それは何時のことだ? いつ俺は彼女に……。

「アル? どうかしたの?」
 
こちらを振り返っていたヘレナが、小首を傾げて聞いてくる。その問いかけになんて言ったら良いのか分からず、俺は頭を左右に振って見せた。

「いや、何でもない。帰ろう、ヘレナ」
 
そう言って彼女の手を引き、一緒に暮らしている家に向かって歩き出した。

☆ ☆ ☆

 
ヘレナが作ってくれた夕食は、どれも俺の好物ばかりだった。誕生日でも記念日でもないと言うのに、今日のヘレナはなぜか張り切って夕食を振る舞ってくれた。

だから俺もその好意に甘えて、腹が膨れるまでヘレナが作ってくれた料理を堪能した。後片付けもすませ、あとは一緒に眠りにつくだけ。
 
そう、いつもと変わらない日常が今日も終えようとしていた。
 
俺は羽織っていたマントを取って、服装を軽くしてからベッドに座った。その拍子にベッドが軽く軋み、じっと窓の外を見つめた。
 
ここはクリエイトが俺に見せている幻の世界だって、頭ではちゃんと分かっているんだ。でも……本当に幻なのかって不安になる。

本当は……あっちが夢で、俺は長い長い夢を見ていて、今目が覚めたばかりなのかもしれない。って、都合の良いように思いたい自分が居る。