ヴェルト・マギーア 星の涙FinalAct

「もしかしてまた嫌な夢でも見られたのですか?」
 
そう言って彼女は辛そうに表情を歪めると、私の髪をそっと撫でた、

「また……嫌な夢」
 
彼女の言葉を聞いて私は思い出しました。

さっきの真っ暗な世界を、私は何度も夢に見ていたことに。それがどれだけ怖く、まだどれほど私に安らぎを与えてくれていたのかを。

「……プラ――」
 
心配してくれている彼女に、『大丈夫ですよ』と言うつもりでした。しかしそこで私はある違和感に気づいたのです。

「……声が……出ない!」
 
確かに私はさっきまで喋っていた。しかしいざ言葉にしてみると、私の声は自分の耳にしか届いておらず、彼女の耳に自分の声が届いているようには見えませんでした。

「……っ」
 
嫌な予感が過りました。まさか……今私が居るのは、人形だった頃の私が居た場所……?
 
ふとそう思った時、心臓が大きく跳ね上がった。

もし……本当にそうなのだとしたら、クリエイトはなぜ私をこの場所へ? でもこの場所は、あの世界にはもう存在していないはずです! 

ですからきっと、これはクリエイトが私に見せている幻! そう強く自分に言い聞かせた時、プラチナの両手が私の頬を包み込んだ。

「っ!」
 
彼女はじっと私の目を覗いてくると、ふっと優しい表情を浮かべた。

「嫌な夢を見ても、今日は顔色がよろしいみたいですね」
 
プラチナは頬から手を離すと、さっき淹れていたハーブティーが入ったティーカップを持って来てくれました。

「さぁ、どうぞ。心が落ち着くと思います」

「…………」
 
目の前に差し出されたティーカップをそっと受け取り、いい匂いのするハーブティーの香りを感じながら、一口ハーブティーを口にする。

「……温かい」
 
これはクリエイトが私に見せている幻であって、決して現実の物ではありません。そう自分に言い聞かせたいのに――本当にそうなの? 

と、自分に尋ねてくる気持ちが心の片隅に居た。
 
彼女が私の頬を包み込んだ温もり、そして心を落ちかせてくれる美味しいハーブティー。本当にこれは……幻なの?
 
私はハーブティーの中で揺れる自分の顔を見つめながら、暖かい朝日が差し込む窓を見上げたのでした。