ほぼ同じ背丈の為、目線が真っ直ぐに衝突する。
一瞬、佐藤さんの瞳が揺れた。

「告げ口とは、配車に関してのことでしょうか?それならば、常務の時間を無駄にすることはできません。それは絶対条件です、しかしながら佐藤さんを私は100%信用することができませんでした、それは今までのご自分の行動を思い出していただければ納得していただけるかと思います。それから、ここへは常務のお見送りに来ただけです、わざわざ佐藤さんに会いに来るほど私は暇ではありません」

「なっ、本当に嫌な女。友達だとか言って北山くんと本当はデキていたり、いつの間にか大島くんまで、全てにおいてわたしの邪魔ばかりして」

冷静さを無くしている彼女は拳を振り上げて向かってくる、感情のまま動く彼女の動きは単純で、ただ斜め後ろに一歩下がるだけで彼女は一人で床に倒れ込んだ。

騒ぎに気づいたセキュリティーセンターのスタッフと主任が出てくると彼女は大袈裟に足を押さえて「ひどい、ヤメテ!」と叫び私を指さしてさらに叫んだ。

「豊田さんに突き飛ばされました」

誰も何も言わない、地下の廊下は暖房が入っているとはいえ少し肌寒い。


主任は柔和な表情のまま
「豊田さん、足を止めさせて悪かったね」

「いえ、それでは失礼します」

丁度やってきたエレベーターに乗り込む寸前、主任の穏やかな声が聞こえた。




「モニターに全て映っていたよ」