「就職先はとっくの前から決まってた。決まっていたけど、勤務先が決まったのは、昨日。

全て決まってからお前に伝えようとした。

就職のことも、辞めることも。

今日お前に出掛けようかと誘ったのはそれを伝えるため。…だけど、想定外のことが起こってそれどころじゃなくなった。」





蒼空さんの言う想定外とは、きっと華さんと優さんのこと。





「事務所に来てからも何回か話すタイミングを伺ったけど、今このタイミングで言うべきじゃないと思って、やめた。

お前が華達のことで心配そうだったから。

今言っても混乱させるだけだと」


「何か言いかけてたのって…そのことだったの?」


「……ああ、そうだな」





急に至近距離に来て、私に何かを言いかけたあの時。



その事を伝えようとしていたんだと、今になって気づいた。



それをキスされるんだと勘違いしたのが恥ずかしいや……





「勤務先……どこになったの?」


「○○県」


「(遠い……)」





てことは





「………引っ越す、ってことだよね…?」




聞かなくても


わざわざ勤務先を教えてくるってことは、きっとそうだと思った。



近場なら、話すタイミングを伺わなくても言えると思うから…




ジッと蒼空さんを見つめると





「……、まあ、そうなるな、」




小さくだけど、その返事。




「そっ、かぁ……」




分かっていたはずなのに、


嫌な気持ちになってしまうのは



離れるのが寂しいから。