片手首は強引にも壁に抑えつけられていて、もう片方の手は自由だけれど、


抵抗?いやいや、出来ない。



まずこの状況について説明して欲しいのと、何故か硬直してしまう身体。



自由な片手はブラリとぶら下げたままで、動けずにいる。



「(これは、いつまで…?)」



少しずつ酸素が足りなくなっていくのにつれて、眉根を寄せた。



それと同時に、やっとの事で解放されれば

驚きのあまりに息をするのを忘れて、静かに呼吸を始める私だが




「……………」




神茂は何事もなかったかのように、床に落ちた携帯に目線を向けると、


スッと手を伸ばし拾いあげて、





「…………チッ」




………舌打ち?

私に再び目線を向けた直後、舌打ちしたよコイツ。




「(は?なに?なんで?)」




訳のわからないまま立ち尽くしていれば、


神茂は私をその場に放置し、スタスタと歩き出したのだ。



携帯は勿論、さっき以上に無残な姿になっていて、多分もうあれは使用できない筈。




「(私、キス、されたよね?)」




帰り際に携帯を拾って、神茂の?って聞いて、近寄ってきて、キスされて、放置。



ただその意味不明な行為と行動から、

私と神茂との不可解な関係は始まりを告げたのだ。