「(ねむ……)」




欠伸を噛み殺し、いつものように学校の門をくぐった。


そこまでは変わらない日常。


「おはよう」と周りで挨拶が飛び交う中、私は両耳にあてていたイヤホンを外す。




「(……、あ。)」




ふと、目線が少し前を歩く人に向く。




「(……神茂)」




両手をポケットに突っ込み、フラフラと危なっかしそうな足取り。



意外だな、遅刻せずに来れたなんて。




「(大半は寝坊かサボりで2限目から来るくせに。)」




私より遥かに大きい背丈。


その後ろ姿を見つめていれば、突如クルリと振り向いたアイツ。




「(ゲッ…)」




不意打ちなそれに、気づかれた…と、不自然に思われないようにゆっくりと目線を外せば




「おはよ」

「えっ、あ、おはよ…う」




まさか、挨拶されるとは思ってなかった。予想外だ。


もっとこう…睨まれる、かと思ってたのに。



不良だからといって、決めつけるのも悪いのだが。




「……………」



その場に止まり、眠そうな目で私を見つめる神茂。一向に動こうとはしない。




「(……待ってる)」




こういうときって、どうすればいい。