「………っそ。」




素っ気なく、返事をした翔。



目を細める翔の瞳には、ハッキリと早瀬くんが映し出されている。



なんだか、嫌なものを見るような目で……



見ているというか、睨んでいるような目つきだった。




「……………」


「……………」




少しの沈黙が経って、遠くの方から翔のことを呼ぶ声がする。



「黒崎ー」と、低い声だったから、翔の友達の誰かだろう。




「よ、呼んでるよ?」


「……………」




軽く顔をそちらに向けた翔は「はぁーっ」と溜め息をつく。



それと同時に、翔は私の頭の上に置いた手を後頭部にスルリと回して、



私を翔の胸に引き寄せた。




「っ………!」




グッと力が入ったそれに驚いて、されるがままに引き寄せられる。



ポスッと額が翔の身体にあたって、抱きしめられている形になった。