消えた未来

 名前を呼んだのに、久我君はいまいち反応してくれなかった。

「どうして久我君がここにいるの?」
「ここ叔父の店。バイト中」

 久我君は簡潔に答えてくれた。

 態度が逆戻りしたのかと思ったけど、接客中に学校の感じで話しかけられて迷惑に思うのは普通だろう。

 雑談は控えたほうがいいだろうと思って、私は中途半端でも会話をやめた。

「知り合い?」
「……クラスメイト」

 友達と言ってもよかったのかもしれないけど、そこまでの仲ではないと思った。

 すると、お姉ちゃんは興味津々に久我君を見た。

 嫌な予感がする。

「真央が男の子と親しいなんて、意外だな」
「ちょっと、お姉ちゃん」
「ごめん、ごめん」

 私があまりよく思っていないのが伝わったようで、お姉ちゃんは笑いながら謝った。

「ほら、注文しよう。久我君は仕事中なんだし」

 お姉ちゃんは子供みたいに伸ばして返事をした。

「やっぱり私はチョコケーキかな。真央は?」

 遠慮しようとしたのに、メニューを渡された。

 これはなにを言っても聞いてくれないだろう。

「……アップルパイ」
「ご注文は以上でよろしいで?」

 私が言うと、久我君はすかさずそう言った。

 私は違和感があったけど、どこか慣れた言葉遣いだったから、そこまで変に思わなかった。