本当に、久我君とは普通に話せていた。

 星那だけじゃなくて、クラスのみんなが驚いていたけど、一週間も経てば慣れたみたいで、それが当たり前のようになっていた。

 星那だけは、まだ私が久我君と話していることに、納得がいってないみたいだけど。

 現に今、自分の席から私たちのほうを睨んでいる。

 久我君への恐怖心のようなものは消えていなくて、本人に直接苦言を呈したことはないけど、しっかり態度に現れていた。

「ないわけじゃないけど、それ、暗に話を聞いてほしいって言ってる?」

 久我君は星那の視線などお構いなしに、話を続ける。

「そんなつもりじゃ……」

 そう言いながら、久我君なら昔の家族に戻れる方法、もしくはヒントを教えてくれるような気がした。

 少しだけ、話してみてもいいかもしれない。

「……ちょっとだけ、聞いてもらってもいいかな」

 そんな気の迷いで言うと、久我君は少し驚いた表情を見せた。

 本当に話したいと言われるとは思っていなかったみたいだ。

「聞くだけなら」

 久我君の返事を聞いて、昔の家族のこと、両親が厳しくなったこと、そして昔の家族に戻りたいことを簡潔に伝えた。

 ちなみに、言い訳だとわかっているから、やりたいことが見つけられないでいるのは、言えなかった。