みんなが彼から距離を取ったせいで、彼の動作が嫌というほど目に入る。

 ドアに貼られていた座席表はちゃんと見てきたらしい。私のほうまで真っ直ぐ歩いてくる。

 星那も怖いようで、少し下がっている。

 彼は私と星那の間を容赦なく通ると、無言で机に荷物を置いて座った。

 ちなみに、最後の動作は視界には入っていない。でも、音を聞けばわかる。それくらい、教室はまだ静かだった。

 だけど、少しずつ音を取り戻してくる。ほとんどが、彼を横目に噂話をしている状態だ。

 そんな中で、星那がどうすればいいのかわからないと目で語っていたから、私は星那に小さく手を振った。

 星那は少しだけ安心した目をすると、自分の席に向かった。

 今の表情をしてしまうのはわからなくはないけど、見捨てられたような気分になってしまう。

 でも仕方ない。私だって、同じことをしてしまったと思う。これは、星那が悪いわけじゃない。

 それにしても、心臓がうるさい。緊張か。恐怖か。自分のことなのに、どっちなのかわからない。

 みんな、徐々に彼がいることを気にしないようになってきたみたいで、噂話程度だったものが、ただの雑談に戻っている。

 羨ましい。私も星那のところに行けば済む話なのかもしれないけど、それは彼を刺激してしまうような気がして、できなかった。