しぶしぶ椅子に座ると、星那がそんなことを言ってくれた。嬉しすぎて、涙が出そうだ。

「星那、好き」

 結構本気で泣きそうになってしまったから、誤魔化そうと星那の腰に抱きつくと、星那は照れたように笑った。

「本当、信じられない。久我と同じクラスとか、めちゃくちゃ嫌なんだけど」

 どこからか、女子のはっきりとした声が聞こえてきた。

 誰が言っているのか気になって、星那を挟んで教室内を見渡す。

 でもみんな誰かと話していて、見つけることができない。

「わかる。不良は学校に来るなって感じ。てか、来るところ間違ってるって気付いてないのかな」

 そのとき、さっきの言葉に同意した子を見つけた。その子は教室の真ん中にいる。

 ということは、一緒にいる、椅子に座ってる子が先に言った子だろう。

 それにしても、やっぱりみんな考えることは一緒ということか。

 まあ、あんなに堂々と言うのはどうかと思うけど。

「私、久我が薬飲んでるの見ちゃったんだよね」
「なにそれ、怖」

 そういう噂話を大きな声でしているほうが怖い。そして、私の気持ちも考えてほしい。

 初耳の噂に、癒されたはずの気持ちが沈んでいた。

「星那……私、帰りたい」
「ごめん、なにも言えない」

 私たちは顔を見合わせて苦笑する。もう、そうするしかなかった。

 それから女子たちの噂話がヒートアップしていくだろうと思ったら、教室にいる全員が、前方のドア付近に注目した。

 人が多くて顔が見えないけど、この学校では異質な金色の髪が見えた。

 なんて、教室が一瞬で静まった時点で誰が来たのかは察していたから、驚きはしない。